乳がん治療  どの治療が一番つらかった?

 

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乳がんと言っても、病気が発覚した時期(ステージ)や種類(サブタイプ)によって、治療内容には驚くほど差がある。乳房温存切除手術の後、抗がん剤なしでホルモン剤を5年間服用するという人もいるが、わたしはステージⅢ、サブタイプはルミナールB HER2陽性というものだったので、術前化学療法(抗がん剤)・乳房全摘手術・放射線治療・分子標的薬療法・ホルモン療法とフルコースの治療を受けている。 

まずはそれぞれの治療の感想を。

 

 

化学療法(抗がん剤治療)

人によっては”脱毛”の副作用が何よりも嫌だと聞く。私も38歳の時に罹患し、子どもの卒園式や入学式も控えていたので、脱毛が気にならなかったわけでは無い。ただ、とにかく「癌を治したい」という一心だったので、当時は「髪の毛なんてくれてやる」という気持ちで挑んだ。

副作用としては抗がん剤を点滴したあと1週間くらいは倦怠感で横になっていることが多く、2つ目の薬は関節痛がつらかった。昔と違って今はいい吐き気どめのお薬があるのがありがたい。

私は手術の前に抗がん剤を投与したため、エコーで腫瘍が小さくなっていくのが目に見えて分かることが抗がん剤をするモチベーションにつながったように思う。抗がん剤がよく効き、「手術で摘出した乳房から癌細胞が見つからない”完全奏功”になれば予後がいい」というデータを見ていたので、とにかく完全奏功するために今を乗り切るんだ、と言い聞かせていた。(結果、完全奏功はしなかったが・・・) 

手術の後に再発予防として抗がん剤を投与する場合、術前投与よりも精神的にはより辛く、髪の毛が抜けることももっとショックだったかもしれない。

 

乳房摘出手術

”温存”と”全摘”。わたしは悩む選択を与えられなかった。わたしの場合は皮膚にまで影響が出ていたので”全摘”の一択だったのだ。

手術においては置かれている状況によって辛さに雲泥の差があるように思う。わたしの場合、手術時の年齢は39歳で、2人の子どもを出産し授乳も終わっていた。なので、「女性として寂しくはあるがしょうがない」という感情だったように思う。ただ、「夫に女性として見てほしい」「温泉にも行きたいし水着も着たい」という思いがあったので、摘出手術と同時に新しく胸を再建する”同時再建”を選んだ。再建の手術費用も保険適用になっている今の医療制度には本当に感謝だ。再建が自費であれば、再建を諦めていたかもしれないし、手術に対してもっとネガティブな感情になっていたと思う。ただ、再建出来るとはいえ、結婚や出産をこれから希望している人にとっては、乳房を失うということはもっともっと大きな意味を持っているだろう。

わたしにとっては精神面よりも肉体的につらかった。手術自体は全身麻酔のため、文字通りあっという間に終わる。しかし、その後数日が心底つらかった。お腹の脂肪を使って再建を行なったのでとにかくお腹が痛い。形成外科の先生から言われた”日にち薬だから”という言葉をひたすら唱えて時間が経つのを待った。7泊8日の入院生活が終わっても、寝た状態から起き上がるのも一苦労。背筋を伸ばすとお腹の傷が引っ張られるので1ヶ月は腰を曲げて歩いていた。リンパもすべて取ったため、左手は術後半年の今もピンと真っ直ぐには上がらない。

 

放射線治療

土日祝日と機械のメンテナンス日をのぞいて、25日間連続で病院に通い放射線を照射する。治療中間あたりから皮膚が赤黒くなりピリピリとした痛み・痒みが出てきたが、抗がん剤や手術を経験した今、これくらいの痛みは何てことない。ただ、25日間予定を調整するのが大変だった。ちょうど子どもの卒園式・春休み・入学式の時期に重なってしまったのだ。他の治療にも共通して言えることだが、自分の命がかかっている治療のため、どんな予定よりも優先するべきなのだと思う。ただ、治療期間が長いため、だんだんと色々なことを犠牲にしていることがつらくなってくる。

手術で癌は摘出したので、ここからは全身に微小転移している癌細胞をやっつけるための再発予防治療になる。再発はとても怖い。ただ、”目に見えない” ”効いている確証がない”ためだんだんと治療に疲れてしまうのだ。  

 

分子標的薬

増殖スピードが速いHer2タイプの乳がんに有効性の高いお薬”ハーセプチン”と”パージェタ”。「とてもよく効くよ」と主治医からも言われ、特に副作用を感じることもないので(心機能の低下が見られることがあるようだが)投与できることがとてもありがたい。ただ、こちらのお薬、とても高価なのだ。もちろん高額医療制度によりわたしが負担している費用は薬価の一部。しかし投与期間も長いので、毎月毎月の出費が家計にひびくのだ。癌保険に加入していなかったのが本当に悔やまれる。

 

ホルモン療法

女性ホルモンを餌に増殖するタイプの乳がん、そして閉経前の罹患だったため、リュープリンという生理をとめる注射を2年ほどうち、タモフェキシンという薬を10年服用しなければならない。こちらはまだ始めたばかりなのだが、今のところ特に副作用は感じていない。生理をとめるので更年期障害のような症状が出るときくが、ホットフラッシュなどはまだない。

しかし、タモフェキシンの服用により子宮体がんに罹患する可能性も若干ながら上がるので、定期的に婦人科で検査をしなければならないそうだ。そして10年という長い服用になるので、そのうち嫌になってしまいそうな気もする。

 

以上がわたしが経験し、これからも続いていく乳がん治療である。

置かれている状況や立場により、どの治療がつらいかは個人差が強く出るだろう。ただ、わたし個人の感想としては、手術の後の数日が1番つらかった。コロナの影響で面会禁止だったので、家族に会うことも出来ず、ただただベットで横になっているあの数日は今思い出しても胸が苦しくなってしまう。

 

つらい治療の先に明るい未来があることを信じて。